発電能力が10MW(メガワット)のメガソーラーを建設するためには、標準で15万~20万平方メートルの土地が必要になる。面積の広さを表す時に
引用する「東京ドーム」は4万7000平方メートルで、その3~4倍に匹敵する。これだけ広い遊休地が全国で残っている場所と言えば、工業地帯のほかにゴ
ルフ場の跡地がある。
固定価格買取制度が始まって以降、ゴルフ場の跡地に巨大なメガソーラーを建設する計画が続出した。2015年度に入ってからも勢いはまったく衰え ていない。最も新しい例ではNTTファシリティーズが9月16日に「宮崎亀の甲太陽光発電所」の建設計画を発表した(図1)。宮崎県の国富町で2014年 9月まで営業を続けていた「亀の甲カントリー倶楽部」の跡地を借り受けて、32MWのメガソーラーを建設する。
50万平方メートルの広さがある用地に、10万3000枚の太陽光パネルを設置する計画だ。運転開始は2017年1月を予定している。年間の発電
量は4000万kWh(キロワット時)にのぼり、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1万1000世帯分に相当する。全国各地に50カ所以
上のメガソーラーを展開するNTTファシリティーズのプロジェクトの中でも最大の規模になる。
同じ9月16日には京セラグループが福島県のいわき市で「福島・田人(たびと)メガソーラー発電所」の工事を開始した。1976年に開業した「田 人カントリー倶楽部」の跡地に27MWのメガソーラーを建設する。このゴルフ場は東日本大震災の被害を受けて廃業に追い込まれた。建設と運営は京セラ TCLソーラーが担当する。
京セラTCLソーラーは京都市にあるゴルフ場の跡地でもメガソーラーの建設を進めている。2013年に営業を終了した「京都国際カントリー倶楽 部」の30万平方メートルを超える敷地に、合計9万枚の太陽光パネルを設置する(図2)。発電能力は京都府で最大の23MWになる。
さらに規模が大きいプロジェクトも進行中だ。京セラが九電工など3社と共同で鹿児島県に建設する「鹿屋大崎ソーラーヒルズ太陽光発電所」である
(図3)。200万平方メートルの用地に34万枚の太陽光パネルを設置して、発電能力は92MWに達する。30年以上も前にゴルフ場の建設計画を中止した
まま用途が見つからない状態にあった。新たに3万世帯分の電力を供給するメガソーラーに生まれ変わる。
山林を切り開いて開発するゴルフ場に対しては環境破壊を指摘する声も多い。メガソーラーに転換すればCO2(二酸化炭素)を排出しない電力を供給で きるメリットがあるものの、大量の太陽光パネルを設置することで景観が悪くなるほか、将来に運転を終了した後には設備を撤去する必要がある。環境保全の課 題は残るが、事業者のあいだには環境に配慮した取り組みも多く見られる。 大阪府の堺市を中心に活動する「大阪いずみ市民生活協同組合」(いずみ市民生協)は組合員に供給する再生可能エネルギーの電力を増やすために、関 西圏でメガソーラーの建設プロジェクトを進めている。そのうちの1つが京都府の亀岡市にあるゴルフ場の跡地を利用した「加舎(かや)の里太陽光発電所」で ある。山の裾野に広がる20万平方メートルの敷地に、9MWのメガソーラーを建設中だ(図7)。
このメガソーラーを建設するにあたって、いずみ市民生協は環境配慮の方針を公表した。伐採した草木を搬出しないで埋め戻すことや、周辺の水田に影
響を与えないように薬剤を使用しないことなどを掲げた。大量の雨が降った時の水害を防ぐため、ゴルフ場の中にある調整池に配水して周辺に流れないようにす
るほか、必要に応じて沈砂池を設置することも検討する。
ゴルフ場の跡地を利用する場合に限らず、大規模なメガソーラーの敷地内に調整池を造ることによって水害を防ぐように設計した事例は数多くある。太陽光をはじめとして環境負荷の低減を図るための再生可能エネルギーが環境を悪化させるようでは意義が薄れてしまう。
最近になってもゴルフ場の廃業は続いている。NTTタウンページが職業別電話帳データ(タウンページデータベース)をもとに集計した結果による と、2005~2014年の10年間でゴルフ場の登録件数が全国で700件以上も減っている(図8)。2014年だけでも78件の減少があった。
バブル期に急増したゴルフ場が適正な水準に戻る一方で、跡地を利用したメガソーラーの建設は今後も増えていく見通しだ。環境に十分に配慮して、地域の活性化にもつながる再生可能エネルギーの事業拡大が望まれる。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1509/21/news011_3.html
固定価格買取制度が始まって以降、ゴルフ場の跡地に巨大なメガソーラーを建設する計画が続出した。2015年度に入ってからも勢いはまったく衰え ていない。最も新しい例ではNTTファシリティーズが9月16日に「宮崎亀の甲太陽光発電所」の建設計画を発表した(図1)。宮崎県の国富町で2014年 9月まで営業を続けていた「亀の甲カントリー倶楽部」の跡地を借り受けて、32MWのメガソーラーを建設する。
同じ9月16日には京セラグループが福島県のいわき市で「福島・田人(たびと)メガソーラー発電所」の工事を開始した。1976年に開業した「田 人カントリー倶楽部」の跡地に27MWのメガソーラーを建設する。このゴルフ場は東日本大震災の被害を受けて廃業に追い込まれた。建設と運営は京セラ TCLソーラーが担当する。
京セラTCLソーラーは京都市にあるゴルフ場の跡地でもメガソーラーの建設を進めている。2013年に営業を終了した「京都国際カントリー倶楽 部」の30万平方メートルを超える敷地に、合計9万枚の太陽光パネルを設置する(図2)。発電能力は京都府で最大の23MWになる。
ゴルフ場の跡地にメガソーラーを建設するメリットは、土地を造成する手間が少なくて済むことだ。もともと山林を造成して日当たりの良い地形にしてからゴルフ場を開業するケースが多く、太陽光パネルを設置する場所として適している。
健康食品メーカーのサニーソーラーが福島県の須賀川市で2015年3月に運転を開始した「サニーソーラー福島中央発電所」は好例だ(図4)。2年
前まで営業を続けていた「福島空港ゴルフクラブ」の跡地に建設したメガソーラーで、76万平方メートルに及ぶ用地には100メートルの標高差がある。
この複雑な地形と起伏に合わせて、合計で10万5000枚の太陽光パネルを配置した。18ホールで構成するゴルフコースと同じ形でメガソーラーが広がっている。造成工事を最小限に抑えて建設費を削減できるうえに、工事を少なくすることで周辺地域の環境保全にも配慮した。
三菱グループと戸田建設が2015年4月に運転を開始した「長崎田手原メガソーラー発電所」の場合には、ゴルフ場の地形に従って太陽光パネルを最 適に配置するために3次元の設計技術を応用した。レーザースキャナで土地の形状を計測して、太陽光パネルに日陰が生じないように架台の高さや間隔を調整し ている(図5)。最新の建設技術で合計5万枚の太陽光パネルを設置した。
太陽光パネルの設置方法だけではなくて、発電した電力を変換するパワーコンディショナー(パワコン)の配置にも工夫が必要になる。不動産会社のタ
カラレーベンが栃木県の那須高原にあるゴルフ場の跡地に建設中のメガソーラーでは、750台にのぼる小型のパワコンを採用した。
ゴルフ場は18カ所に分かれるコースで構成するために、太陽光パネルを設置する場所も分散する(図6)。通常のメガソーラーでは1台の出力が 500kW(キロワット)を超えるような大型のパワコンを使って数千枚の太陽光パネルから電力を集めるが、パネルの設置場所が分散するゴルフ場の跡地では むずかしい。そこで出力が20kWの小型のパワコンを使って、1台あたり160枚程度の太陽光パネルから発電した電力を集約する。
図6 那須高原にあるゴルフ場の跡地に建設するメガソーラーの完成イメージ。出典:タカラ
三菱グループと戸田建設が2015年4月に運転を開始した「長崎田手原メガソーラー発電所」の場合には、ゴルフ場の地形に従って太陽光パネルを最 適に配置するために3次元の設計技術を応用した。レーザースキャナで土地の形状を計測して、太陽光パネルに日陰が生じないように架台の高さや間隔を調整し ている(図5)。最新の建設技術で合計5万枚の太陽光パネルを設置した。
ゴルフ場は18カ所に分かれるコースで構成するために、太陽光パネルを設置する場所も分散する(図6)。通常のメガソーラーでは1台の出力が 500kW(キロワット)を超えるような大型のパワコンを使って数千枚の太陽光パネルから電力を集めるが、パネルの設置場所が分散するゴルフ場の跡地では むずかしい。そこで出力が20kWの小型のパワコンを使って、1台あたり160枚程度の太陽光パネルから発電した電力を集約する。
図6 那須高原にあるゴルフ場の跡地に建設するメガソーラーの完成イメージ。出典:タカラ
山林を切り開いて開発するゴルフ場に対しては環境破壊を指摘する声も多い。メガソーラーに転換すればCO2(二酸化炭素)を排出しない電力を供給で きるメリットがあるものの、大量の太陽光パネルを設置することで景観が悪くなるほか、将来に運転を終了した後には設備を撤去する必要がある。環境保全の課 題は残るが、事業者のあいだには環境に配慮した取り組みも多く見られる。 大阪府の堺市を中心に活動する「大阪いずみ市民生活協同組合」(いずみ市民生協)は組合員に供給する再生可能エネルギーの電力を増やすために、関 西圏でメガソーラーの建設プロジェクトを進めている。そのうちの1つが京都府の亀岡市にあるゴルフ場の跡地を利用した「加舎(かや)の里太陽光発電所」で ある。山の裾野に広がる20万平方メートルの敷地に、9MWのメガソーラーを建設中だ(図7)。
ゴルフ場の跡地を利用する場合に限らず、大規模なメガソーラーの敷地内に調整池を造ることによって水害を防ぐように設計した事例は数多くある。太陽光をはじめとして環境負荷の低減を図るための再生可能エネルギーが環境を悪化させるようでは意義が薄れてしまう。
最近になってもゴルフ場の廃業は続いている。NTTタウンページが職業別電話帳データ(タウンページデータベース)をもとに集計した結果による と、2005~2014年の10年間でゴルフ場の登録件数が全国で700件以上も減っている(図8)。2014年だけでも78件の減少があった。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1509/21/news011_3.html
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