Saturday 8 September 2012

スマートエネルギービル 空調制御、年齢や職種に対応

 地球温暖化対策のため二酸化炭素(CO2)の排出量削減が叫ばれる中、大阪ガス(大阪市中央区)は、新たに建物の入居者の行動を分析して効果的な省エネ 設計を施す「スマートエネルギービル(SEB)」のコンセプトを打ち出した。7月には、第1号となる同社北部事業所(大阪府高槻市)のSEB化が完了。太 陽光発電など他の省エネ設備と合わせて約25%のCO2削減効果を見込んでおり、新たなビジネスモデルとして普及を目指す。(川瀬充久)

 同社は北部事業所の改修工事にあたり、同事業所に観察員を置いて社員ら約300人の行動をくまなく観察。さらに一部の社員に対してインタビューを行い、勤務状況について詳しく調査を行った。

 その結果、省エネが進まない主な原因として、年齢や性別、職種などによって温冷感に差があることや、社員とビルの管理会社との意思疎通が不足していることなどが判明。解決策を事業所の基本設計に組み込んだ。

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 太陽光発電や太陽熱利用空調、発電機能付きガスヒートポンプなどの省エネ設備に加え、社員が携帯しているIP(インターネットプロトコル)電話の在室検 知機能を利用した空調制御システムを採用。建物内各所に設置した受信装置が取得した所有者の年代や性別などの情報をもとに、エリアごとに細かく温度設定や 外気導入量を決める。

 ビルの出入り口付近には室温を低く設定した「クーリングルーム」を設置。ルーム内には体表面の温度が分かるモニターが設置され、帰社した外勤者が涼むことで、建物内の温度設定を過剰に下げることを抑制できるようにした。

 また、これまでビル管理会社が使用していたエネルギー管理システムを、社員らも利用できる「BEICS(ビークス)」と呼ばれる独自のシステムに変更。専用のウェブサイトにアクセスすると、各階の室温や省エネ達成率などが一覧できる。

 さらに、社員が室温設定について「暑い」から「寒い」まで5段階で投票できるようになっている。投票結果は30分ごとに集計され、多数決で温度設定を変更する方式を採用した。同社は「社員が自分で決めた室温なら満足しやすく、省エネにつながる」としている。

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 同社は平成21年に「大阪ガス行動観察研究所」を立ち上げ、人間工学や環境心理学などの分野の専門家が「行動観察」の研究を進めてきた。

 行動観察は潜在的な問題点やニーズを洗い出すために欧米のマーケティングでよくとられる手法だが、省エネの分野での利用はまれだという。

 同社土木建築チームの植田浩文副課長(39)は「CO2削減をはじめとした環境ビジネス市場は、節電意識の高まりもあって今も活況。企業や官公庁からの需要は高いはず」と話す。

 同社は年間約25%(約200トン)のCO2削減効果を見込んでおり、光熱費に換算すると約700万円にあたる。

 8月の本格導入以降、同事業所にはすでに企業や官公庁などから20件以上の見学の申し込みが寄せられているといい、SEBへの関心の高さを示している。

 同社は今後、ノウハウや技術の普及をはかる方針で、「省エネについてのコンサルティング業務やBEICSの販売などの事業化を目指したい」などとしている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120908-00000127-san-soci

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