東京電力福島原発事故後、再生可能エネルギーの一つとしてますます重要性が高まる風力発電だが、風力発電単独の環境基準がなく、全国で騒音などの問題が起
きている。愛知県田原市では、風力発電施設のそばに住む農業男性が、騒音を理由に運転停止を求める訴訟の準備を進めている。この男性の家を訪ねてみると、
鉄道や幹線道路などが放つ騒音とは異質な音が、家の中まで侵入していた。【清藤天】
◇「ブォー」夜中に跳び起き
北西の風が吹き、風力発電の風車が回っている。規則的な「フォンフォン」という音と「ブォー」という連続音が混じる。ミツウロコグリーンエネルギー(東 京)が2007年1月に設置した久美原風力発電所(1基、出力1500キロワット)の北東約350メートルの所に、農業を営む大河剛さん(45)の家があ る。
風車の音に悩む大河さんは昨年8月、運転停止を求めて仮処分申請したが、名古屋地裁豊橋支部は同10月、騒音について「受忍限度を超えると評価できない」などとして、申請を却下した。
音の違いを聞くため1~2月に早朝、日中、夕方の3度訪ねた。「ジェット機というか、古い換気扇やエアコン室外機を回すような音」と大河さんが説明する 「ブォー」という音は3回とも聞こえた。風の強さによって高くなったり低くなったりし、さらに鋭い感じになったり、太くなったりする。「稼働直後の夜中、 家族が『何の音だ』と跳び起きたくらいだ。風の強さで音が波を打ち、いらつく」と大河さんは言う。
周辺で苦情を訴えるのは大河さんだけだ。実際、記者が訪ねた3度とも、発電所から等距離の別の民家付近で聞き比べてみたが、北側はほとんど音は聞こえず、南側も風切り音はするが、換気扇が回るような音は感じなかった。
大河さん方で環境省が09年11月に測定した結果は、夜間で屋外約47デシベル、屋内約36デシベル。環境基準は夜間屋外で最大45デシベルと定められ ている地域だ。大河さんは17年ほど前、「静かな場所で暮らしたい」と転居してきた。しかし、一家4人は風車稼働後の07年6月に約3キロ離れたアパート で、毎晩避難する生活を送っている。
ミツウロコグリーンエネルギー電力事業部は「基準を守り、行政指導に従ってやっている」と説明する。
◇全国64カ所で苦情
環境省が2012年度に出した調査報告は、風車騒音には低周波が多く含まれるため構造物を通り抜ける力が強く、一般住居は10デシベル程度しか低減できないとしている。さらに、回転数が変わることで音がゆらぐ「振幅変調音」で不快さが高まると指摘する。
同省大気生活環境室によると、全国の風力発電施設は、03年度末に741基だったが、12年度末は1916基に増えた。10年度に実施された全国調査で は389カ所のうち、苦情や要望書が出された施設が64カ所あった。再生可能エネルギーの比重を高めるために、騒音は解決すべき課題となっている。
だが、風力発電に対する単独の環境基準はなく、対応は設置先の自治体に任されている。大河さんの家がある田原市は12年5月、民家との距離を600メートル以上離すことを定めた独自のガイドラインを施行した。
同省の12年度の調査報告は、夜間の屋外の目標値を35デシベルと提案しているが、「いま問題のない施設も抵触する」などと事業者側の反発があり、風車騒音に対する環境基準設定のめどは立っていないのが現状だ。【清藤天】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140222-00000017-mai-soci
◇「ブォー」夜中に跳び起き
北西の風が吹き、風力発電の風車が回っている。規則的な「フォンフォン」という音と「ブォー」という連続音が混じる。ミツウロコグリーンエネルギー(東 京)が2007年1月に設置した久美原風力発電所(1基、出力1500キロワット)の北東約350メートルの所に、農業を営む大河剛さん(45)の家があ る。
風車の音に悩む大河さんは昨年8月、運転停止を求めて仮処分申請したが、名古屋地裁豊橋支部は同10月、騒音について「受忍限度を超えると評価できない」などとして、申請を却下した。
音の違いを聞くため1~2月に早朝、日中、夕方の3度訪ねた。「ジェット機というか、古い換気扇やエアコン室外機を回すような音」と大河さんが説明する 「ブォー」という音は3回とも聞こえた。風の強さによって高くなったり低くなったりし、さらに鋭い感じになったり、太くなったりする。「稼働直後の夜中、 家族が『何の音だ』と跳び起きたくらいだ。風の強さで音が波を打ち、いらつく」と大河さんは言う。
周辺で苦情を訴えるのは大河さんだけだ。実際、記者が訪ねた3度とも、発電所から等距離の別の民家付近で聞き比べてみたが、北側はほとんど音は聞こえず、南側も風切り音はするが、換気扇が回るような音は感じなかった。
大河さん方で環境省が09年11月に測定した結果は、夜間で屋外約47デシベル、屋内約36デシベル。環境基準は夜間屋外で最大45デシベルと定められ ている地域だ。大河さんは17年ほど前、「静かな場所で暮らしたい」と転居してきた。しかし、一家4人は風車稼働後の07年6月に約3キロ離れたアパート で、毎晩避難する生活を送っている。
ミツウロコグリーンエネルギー電力事業部は「基準を守り、行政指導に従ってやっている」と説明する。
◇全国64カ所で苦情
環境省が2012年度に出した調査報告は、風車騒音には低周波が多く含まれるため構造物を通り抜ける力が強く、一般住居は10デシベル程度しか低減できないとしている。さらに、回転数が変わることで音がゆらぐ「振幅変調音」で不快さが高まると指摘する。
同省大気生活環境室によると、全国の風力発電施設は、03年度末に741基だったが、12年度末は1916基に増えた。10年度に実施された全国調査で は389カ所のうち、苦情や要望書が出された施設が64カ所あった。再生可能エネルギーの比重を高めるために、騒音は解決すべき課題となっている。
だが、風力発電に対する単独の環境基準はなく、対応は設置先の自治体に任されている。大河さんの家がある田原市は12年5月、民家との距離を600メートル以上離すことを定めた独自のガイドラインを施行した。
同省の12年度の調査報告は、夜間の屋外の目標値を35デシベルと提案しているが、「いま問題のない施設も抵触する」などと事業者側の反発があり、風車騒音に対する環境基準設定のめどは立っていないのが現状だ。【清藤天】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140222-00000017-mai-soci
No comments:
Post a Comment