Sunday, 1 September 2013

九州電力 家庭向け電気料金、過去最高水準 個人消費の足かせに

電気料金が高止まりしている。九州電力管内の標準家庭の料金は、9月に過去最高の月7197円となり、東日本大震災前に比べて1千円も割高になった。10 月分はやや下がるが過去最高水準だ。原発長期停止で火力発電燃料の石油や液化天然ガス(LNG)の購入費が膨大になっていることや、再生可能エネルギーの 利用者負担が料金を押し上げる。エジプトやシリアの情勢不安で一段の原油高も懸念される。景気の本格回復には個人消費の持ち直しが欠かせないが、電気料金 が家計の足かせとなりつつある。

 電気料金の変動は、燃料費の価格に連動し、毎月一定の幅の中で自動的に上下する「燃料費調整制度」(燃調)に基づくものと、発送電の原価を洗い直して経済産業相が認可する抜本的な改定の2種類がある。


 平成23年3月の東京電力福島第1原発事故以降、国内の原発は次々と定期検査に入り、再稼働できない状況に陥った。火力発電への依存度が高まり、燃調による料金高騰を招いている。

 九電の場合、玄海原発(佐賀県玄海町)と川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が稼働していた22年度は、発電電力量のうち火力の比率は40%程度だった。

 ところが、23年12月の玄海4号機の定検入りで、九電が所有する原発6基は全て停止し、24年度の火力比率は80%に達した。九電の燃料費は22年度決算の2848億円から、24年度は6797億円と2・4倍に膨らんだ。

 燃料費の増大は、燃調を通じて電気料金に跳ね返る。

 震災直前の23年1月に6241円だった標準家庭の電気料金は、右肩上がりを続けた。

 さらに、24年7月には太陽光などで起こした電気を電力会社が買い取り、全利用者の料金に上乗せする再生可能エネルギー固定価格買い取り制度が始まった。24年8月から毎月66円が、25年5月以降は105円が家庭の電気料金に加算されている。

 燃調による料金上昇だけでは収支不足を補えず、深刻な経営難に陥った九電は、今年5月に家庭向けを6・23%、大口向けで11・94%値上げする本格改定に踏み切った。

 とどめは為替レートだった。アベノミクスによる円安傾向で、石油やLNGの輸入価格が高騰。北陸電力に次いで、全国2番目の安さを誇ってきた九電の電気料金は過去最高となった。

 だが、電気料金について、円安の弊害だけを強調するのは間違っている。

 今年4~6月の円相場は1ドル=98円。1ドル=108円とさらに円安で、かつ世界の原油相場も高かった平成21年1月当時の標準家庭の電気料金は6868円だった。

 原発長期停止により、日本の電力会社は大量の石油やLNGを購入している。売り手の言い値で大量の燃料を買い取らざるを得ない状況が、燃調による値上げを増幅する。

 そもそも燃調は平成8年に導入された。

 当時は、安く石油やLNGが調達できる環境が整っていたことから、むしろ電気料金を速やかに値下げをするのが目的だった。その燃調が料金を跳ね上げている。

 九電幹部は嘆く。

 「本来値下げを目的にした制度が、大震災で反作用している。九州の産業界や家計を考えれば、料金値上げが続く事態は避けたいのだが…」

 円安で自動車や電機など輸出産業は息を吹き返しつつある。今後、個人消費に火が着き、内需が拡大するのが、安倍政権が描く景気回復のシナリオだ。

 だが、原発再稼働の先延ばしがもたらす電気料金値上げは、家計や企業の負担となり、このシナリオを崩壊させかねない。

 経済産業省の試算によると、平成25年度に沖縄電力を除く電力9社が支払う燃料費は、東日本大震災前と比べて原発停止分だけで3兆8千億円増えるという。(津田大資)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130830-00000579-san-soci

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