Sunday, 5 January 2014

<「中華の夢」の行方(6)>原発、2050年に400基分計画=地震帯にも建設―シェールガスも米と開発

世界一の14億人近くの人口を抱え経済発展途上の中国にとってのアキレス腱はエネルギー。経済の急拡大や生活レベルの向上に伴って電力需要が増大、供給不 足も深刻化している。総発電量のうち7割以上は石炭火力発電に依存しているが、石炭は大量の2酸化炭素を排出し、PM2.5(微小粒子状物質)の元凶とさ れる。このため石炭消費の大幅削減を迫られ、天然ガス、原油を使う火力発電や自然エネルギーに力を入れているが、旺盛な電力需要に追い付かない。
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こ うした中、脱化石燃料の目玉として原子力発電への期待は大きい。中国では今でも原発が15基稼働。建設中の原発は30基もあり、2020年までに原子力発 電量を現在の5倍の5800万キロワットへの拡大を計画。30年までに2億キロワットを目指すことを検討している。さらに2050年時点で原発の総出力4 億キロワットと想定する構想まである。出力100万キロワットの原発で計算すると実に400基分。単純計算すれば今後40年足らずで原発を25倍に拡大す ることになる壮大なものだ。

◆事故なら放射線物質が日本列島にも

怖いのは、稼働中や建設中の原発の大半が地震の発生しやすい地域に立地していること。中国の沿海部は、北は遼寧省から南は海南島の昌江原発まで世界有数の 原発集積地になりつつある。特に山東省は栄成原発、海陽原発など3カ所の原発が沿岸部に集中。津波の備えが不十分との指摘もある。

渤海湾に面する海岸地帯に位置する紅沿河原発(遼寧省)では、108万キロワットの発電能力を持つ加圧水型軽水炉(PWR)1、2号基がほぼ完工済み。 3、4号基も建設が進んでおり、14年夏までに運転を開始する。この原発の立地する渤海湾には中国でも最も地震を引き起こしやすいとされる地震帯があり、 地震帯のほぼ真上に建設中だ。この地域はたびたび大きな地震に見舞われており、1976年には原発近くの唐山市で直下型大地震「唐山地震」が発生、24万 人を超す死者を出している。

広東省では既存の大亜湾、嶺湊の両原発に加え、建設中の陽江、台山など水流が途切れる「断流」が発生する河川に冷却水を依存する原発も多い。黄河は下流域 で1990 年代に幾度も断流し、年間200日以上、干上がった年もあったほどだ。もし原発に隣接した河川で原子炉稼働中に水流が減り、十分な冷却水を得られなくなれ ば、福島第1原発事故の再来となる。

これら原発が事故を起こしたら、一体どうなるか。中国から日本列島に向けて常時、偏西風が吹いており、酸性雨から黄砂まで様々な大気汚染物質が中国から日本に運ばれてくる。中国の原発で事故が起きれば、日本列島は放射性物質の影響を受けるのは必至とみられている。

中国側資料によると、中国の原発1基当たりのトラブル件数は05年2.6件(日本0.3件)、07年2.1件(同0.4件)で、日本の5倍以上の割合で記 録されている。トラブルがあった場合、日本は原子炉を止めて安全を確認するが、中国では稼働しながら故障を修理するという経済優先の対処法もみられるとい う。

三菱電機など日本のメーカーからデジタル制御システムなどを輸入しているが、日本の原発技術者は、今後、技術者不足が中国の原子力発電所発展のネックにな ると懸念。中国の監督・管理機関である国家核安全局は規模が小さく、現段階でさえ新たな建設プロジェクトに対応するのがやっとの状態で、原発を安定的に増 設するためには原子力技術者の大量増員が必要となるという。

中国の原発当局者は「福島の原発事故の教訓を取り入れ第3、第4世代の原発を建設しており、安全性には絶対の自信がある」と強調。数年以内に原発技術を外 国に輸出することも計画しているが、日本の原発専門家の多くは「中国が技術を輸出できるレベルに達するにはまだ相当の時間が必要」と見ている。

こうした中、多くの原発がある広東省の江門市政府が13年7月、大規模な住民の抗議デモを受け、同市鶴山の核燃料工場建設計画の中止に追い込まれた。中国 では震災・津波対策の実態などの情報開示もほとんど行われていない中、地域住民の原発建設に対する監視が厳しくなる一方。核燃料の調達問題もあり、中国の 原発開発は多くの課題に直面している。

このほか、中国は太陽光発電にも力を投入。15年までの太陽光発電設置目標を2100万キロワットから、既存容量の4倍超に当たる3500万キロワットに引き上げた。原発27基分に相当する能力増だ。

◆「世界一の埋蔵量」を有効活用

世界のエネルギー革命の起爆剤となっているのが新型天然ガス・シェールガス。最大の生産国米国が世界を大きくリードしているが、米国が中国に対し、大気など環境への負荷が低いシェールガスの輸出、開発技術協力の両面で協力することで協議が進められている。

中国のシェールガス推定埋蔵量は36.1兆立法メートルで世界一。米国の24.4兆立法メートルを大きく上回る。2015年に65億立方メートル、20年 に600億~1000億立方メートルの生産を目指している。ただ、米国とは異なり、中国ではシェールガスを含む岩盤が地下数千メートルと深い場所に分布し ている上、地層が複雑で岩盤に封じ込められたガスの回収には高度の技術を必要とする。開発コスト縮減や環境対策も急務で、大きく先行する米国のシェールガ ス開発技術の導入を切望している。

オバマ政権は、米国からの投資資金を中国のシェールガス開発に投入し、米国のシェールガス開発技術を中国に供与しすることをすでに承認。中国は米国産 シェールガスの輸入も要望している。米国は自由貿易協定(FTA)の締結国以外への輸出を制限しているが、中国への輸出も対日輸出と同様、特別扱いする方 向で検討中である。

中国政府は13年7月に米ワシントンで開いた米中戦略経済対話で輸入申請など手続きに関する情報の提供を要請、米国側もこれに応じた。米開発企業各社も有 望市場中国からの受注は巨額の事業収益につながると色めき立っている。エネルギーという高度戦略分野でも「米中協調」が進行している。(Record china主筆・八牧浩行)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140103-00000001-rcdc-cn

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